まずはこれから作ろうとしている「単振り子」について簡単におさらいをしておきましょう。図39のような単振り子の運動を考えます。
図 39: 単振り子
図39のようにx軸をとると、単振り子の運動方程式は次のようになります。
両辺の m を消去して、 g/l=ω とおいてやると
(4-2)
となります。
さて、我々は高校物理で「振り子の等時性」ということを習います。単振り子の周期は振幅に依らず一定であり、その周期は T=2π√(l/g) と書けるというものでしたね。ただしこれが成り立つには条件があります。それは振幅が十分に小さい、つまり θ<<1 ということです。この条件のもとで振り子の等時性は成り立ちます。
(4-2)式で実際に確認してみましょう。θ<<1 ならば sinθ=θ 、と近似することができます。このとき(4-2)式は
(4-3)
となります。これはよく知られた線形の二階常微分方程式であり、その一般解は
(4-4)
と書くことができます。初期条件として t=0 で、θ=θmax、dθ/dt=0をとります。これは「θ=θ0の位置から静かに手を離した」という状況に対応します。このとき、(4-4)式は
(4-5)
となります。cos は周期 2π の周期関数ですので、振り子の周期 T をとすると、ωT=2π という関係が成り立ちます。これをに T ついて解き、さきほど定義した ω をもとに戻すと
(4-6)
となります。これは定数ですので、振り子の等時性が導けましたね!
さて、では振幅が大きい場合には単振り子の周期はどうなるのでしょうか?(4-2)式を解くのは容易ではなく、その周期は次のような複雑なものになります。
は第一種楕円積分と呼ばれるものです。ややこしい式を出しましたが、言いたいことは「振幅が大きくなると周期はもはや一定ではなく、振幅に依存するようになる」ということです。
振幅が大きい場合には、単振り子の周期は(4-6)式で表されるような定数ではなく、(4-7)式のように振幅に依存するということがわかりました。
最終更新時間:2011年01月08日 19時21分49秒